不動産投資を始めるには、ある程度の貯金(手持ち資金)が必要と思っている人が多いのではないでしょうか。貯金が多ければ物件購入がしやすくなったり、投資の選択肢が増えたりするのは確かです。しかし、貯金がなくても購入できる投資用物件はたくさんあります。
この記事では、不動産投資と貯金の関係について詳しく説明します。資金面で不動産投資を始めるのは難しいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産投資は貯金がないとできないのか
冒頭でも触れたように、貯金がなくても購入できる投資用物件はたくさんあります。ただし、不動産投資は物件を購入することが目的ではありません。ここでは、「成功する不動産投資」という視点から、「貯金」の持つ意味・役割を検討します。
ある程度の自己資金はあったほうが良い
不動産投資の目的は、購入した物件を賃貸して家賃収入を得ることです。物件を賃貸していれば、空室になることもありますし、設備の故障や災害などの理由により突発的な支出が発生することも考えられます。
このような場合、ローンの返済や修理・補修のための支出は、自己資金で賄わなければなりません。ある程度の自己資金はあったほうが、失敗のリスクが低くなることは間違いありません。
フルローンを組めば頭金ゼロ円で融資は受けられる
物件の購入資金すべてを借り入れるフルローンを組めば、頭金分の資金を自分で用意する必要はありません。ただし、フルローンが組めるかどうかは、物件や購入者に対する金融機関の評価次第です。
物件を賃貸中に設備の故障や災害による破損などが発生したら、オーナーは速やかに対応しなければなりません。賃貸による収益が順調に上がっている状況であれば、追加融資を受けられる可能性もありますが、ある程度の備えはしておいたほうがいいでしょう。
不動産投資を始めるのはある程度貯金を貯めてからにする
ローンで物件を購入した場合、空室が発生して家賃収入がなくなると返済に支障を来します。返済が滞った場合、金融機関に物件を差し押さえられ、自己破産するという事態も考えられます。
不動産投資のリスクは、どのようなものであっても最終的には資金の問題に帰結します。不動産投資を始めるならば、ある程度の自己資金を貯めておくことをおすすめします。
貯金があれば金融機関から借入がしやすくなる
ローンを組む際、金融機関はさまざまな要素を総合的に判断して審査しますが、端的に言えば「購入者が借入金を返済できるか(貸出金を回収できるか)」がポイントとなります。十分な貯金があれば、借入額を抑えることができるため、金融機関の審査を通りやすくなります。
2,000万円の物件を購入するときに、頭金500万円があるケースと頭金なしのケースについて考えてみましょう。金利2.0%、借入期間20年とすると、頭金500万円(借入金額1,500万円)だと、毎月の返済額は7万5,882円です。一方、頭金なしでは、毎月の返済額は10万1,176円になり、約2万5,000円多くなります。
頭金なしだと、同じ物件から毎月約2万5,000円高い賃料収入を得なければならないわけです。どちらが返済しやすいかは明白でしょう。
必要な貯金額は購入したい物件価格による
不動産投資を始める前に、どれくらいの貯金をしておけばいいのでしょうか。一般的に不動産を購入する際の頭金は物件価格の2割~3割程度と言われています。頭金を自己資金で支払うとすると、必要な貯蓄額は以下のようになります。
物件価格5,000万円程度・・・貯蓄額の目安:1,200万円前後
物件価格1億円程度・・・・・貯蓄額の目安:2,500万円前後
現在の貯蓄額に見合った物件を購入するか、物件価格に見合うまで貯蓄を増やすかは、自分が不動産投資を行う目的などに合わせて判断するといいでしょう。
不動産投資でフルローンを組むメリットとデメリット
フルローンを組むことにはメリットもあればデメリットもあります。メリットとデメリットをよく理解して、自分が不動産投資をする目的や目標とする投資規模、年収、年齢などに応じて、上手にフルローンを活用しましょう。
自己資金を残せてレバレッジ効果を最大化できる
フルローンを組む最大のメリットは、「小さい資金で大きなリターンが期待できる」ことです。これを「レバレッジ効果」と言います。購入にかかる費用が2,500万円(諸費用100万円を含む)・年間利回り10%の物件について、「頭金400万円+ローン(金利2%)」と「頭金なしのフルローン(同)」のケースを比べてみましょう。
頭金400万円 | 頭金なし | |
投下資金 | 500万円(頭金+諸経費) | 100万円(諸経費のみ) |
借入額 | 2,000万円 | 2,400万円 |
利払い(初年度概算) | 40万円(2,000万円×2%) | 48万円(2,400万円×2%) |
年間収入 | 240万円(2,400万円×10%) | 240万円(2,400万円×10%) |
実質年間収入 | 200万円(240万円-40万円) | 192万円(240万円-48万円) |
投下資金に対する収益の割合 | 0.4(200万円÷500万円) | 1.92(192万円÷100万円) |
このように、フルローンの方が大きなレバレッジ効果を得ることができます。ただし、前述したようにフルローンだと「ローン返済額」が増えるので、キャッシュフローについてよく確認しておくことが重要です。
返済額が増えて審査が厳しくなる
最も大きなデメリットは、返済額が増えることです。しかも、支払利息も増えるため、頭金がある場合に対して、借入元本の差以上に返済総額の差は大きくなります。例えば、2,500万円の物件を購入する際の借入金について、返済額を比較してみましょう(借入期間20年、元利均等返済、金利2%)。
借入額2,200万円(頭金300万円)・・・返済総額2,671万560円、月々返済額11万1,294円
借入額2,000万円(頭金500万円)・・・返済総額2,428万2,240円、月々返済額10万1,176円
フルローンは頭金500万円の場合に対して、総返済額は約600万円多くなり、そのうち約100万円が支払利息の増加分です。
また、計算例からわかるように借入金額が増えると月々の返済額も約2万5,000円多くなります。フルローンの場合は同じ物件でより高い収益を上げる必要があるため、金融機関の審査も厳しくなります。
不動産投資でフルローンを組みやすい条件
物件購入のために自己資金を使わなくて済みフルローンは、不動産投資を考えている人にとって魅力的と言えます。ただし、どのような人・物件でもフルローンを利用できるわけではありません。ここでは、フルローンを組みやすい条件を確認します。
収益が安定している
ローンを組んで購入した物件で空室が発生した場合、オーナーは自己資金で返済する必要があります。このため、物件の賃貸収入とは別に、安定した収入源を持っていると、金融機関の審査で有利になります。
具体的には、上場企業・大手企業の社員や公務員は、安定した収入があるとして、フルローンを組みやすい傾向があります。
自己資金に余裕がある
同様の理由から、自己資金に余裕がある場合も審査で有利になります。不動産会社の指定する金融機関を利用するなど、取引のなかった金融機関でローンを組む場合には、事前に口座を開設して預金量を増やしておくと、より信頼を得やすくなります。
個人事業主や勤務先が中小企業の場合は、何年にわたる実績があっても、「安定した収入」については厳しく評価される可能性があります。そうした方たちが不動産投資を始めるには、自己資金の充実が必須と言ってもいいでしょう。
物件に高い収益性がある
金融機関は資金回収を重視するので、購入する物件の収益力も審査の対象になります。収益性が高かったり、継続的に安定した収益を上げられたりする物件は、フルローンを組みやすいと言えます。
例えば、ある程度築年数が経っているものでも、賃貸での十分な稼働実績があり、安定的にキャッシュフローを生み出しているものは、収益性が高い物件と判断される可能性が高いでしょう。
不動産投資に必要となる諸費用
不動産は購入するときに、物件購入費以外にもさまざまな費用がかかります。基本的に、購入費以外の費用は自己資金で支払います。ここでは、発生する主な費用について説明しますので、必要な自己資金の目安にしてください。
物件購入費用や手付金
不動産の売買では、契約時に買い主が手付金を支払います。手付金は物件価格の5%~10%が目安とされていますが、決まった相場があるわけではありません。フルローンを組む場合を除き、手付金は自己資金で賄います。自己資金が少ない人は、売り主と手付金の額について交渉してみるといいでしょう。
不動産を購入する際、取引の仲介を依頼した不動産会社に成功報酬として支払うのが仲介手数料です。仲介手数料は、法律で以下のように上限が決まっています。
200万円超400万円以下の部分・・売買価格×4%+消費税
400万円を超える部分・・・・・・売買価格×3%+消費税
400万円を超える物件の正確な上限手数料は、3段階に分けて計算したものを合算して求めますが、手間がかかるため「売買価格×3%+6万円+消費税」で簡便に計算するのが一般的です。
収入印紙代
収入印紙代とは、不動産を取得する際に締結する以下の契約書にかかる「印紙税」のことです。
- 不動産売買契約書
- ローンを組むときの金銭消費貸借契約書
印紙税額は契約する金額に応じて以下のようになります。なお、令和4年3月31日までに締結される不動産売買契約書については印紙税額が軽減されています。
通常の税額 | 軽減された税額 | |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
不動産登記費用
不動産登記費用とは、不動産を売買したときに所有権の保存・移転登記するときにかかる費用のことで、具体的には登録免許税と司法書士報酬がかかります。所有権登記をしないと、第三者に所有権を主張できず、金融機関からの融資も受けられません。
不動産投資用物件にかかる登録免許税は、以下のように計算されます。
土地の所有権移転登記:固定資産税評価額×税率1.5%(令和5年3月31日までに登記を行う場合の軽減措置。通常税率が2.0%)
建物の所有権移転登記:固定資産税評価額×税率2.0%
抵当権設定登記:借入額×税率0.4%
司法書士報酬は、登記手続きを依頼する司法書士へ支払うものです。依頼する内容などによって異なりますが、通常は10万円を目安にしておけば問題ないでしょう。
固定資産税
固定資産税は、建物や土地などの資産に対して課される税金(市町村税)です。不動産の場合は、土地と建物それぞれの固定資産税評価額(課税標準額)に税率(標準税率は1.4%)をかけて求めます。また、特例措置などにより、課税標準額が固定資産税表額より低くなる場合があります。
固定資産税を支払うのは、その年の1月1日時点における物件所有者です。年の途中で新築物件を購入した場合、初年は固定資産税が発生せず、2年目からの支払いになります。中古物件は売り主がその年の固定資産税を納税しているため、買い主は日割計算をして引渡日以降の分を「固定資産税の清算金」として支払うのが一般的です。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得したときにかかる税金(都道府県税)です。やはり、固定資産税評価額に税率(原則4%)をかけて求めます。固定資産税と同様に、特例措置などにより、課税標準額が固定資産税表額より低くなる場合があります。
不動産を取得した場合は、期日内に所在の都道府県税事務所に申告する必要があります。提出期日は自治体によって異なるので、ホームページなどで確認するといいでしょう。また、期日は取得した不動産の「登記が完了した日」から計算されるので注意してください。
申告後、6か月~1年以内に納税通知書が届きますので、記載された期限までに不動産取得税を納付します。取得してから納付までに時間があるため、「支払うお金がない」といった事態に陥らないよう、不動産会社などに税額の目安を確認して準備しておくことをおすすめします。
火災保険料や地震保険料
ローンを組んで不動産を購入する場合、火災保険加入が金融機関の貸出条件として必須になります。仮にそうでなくても、火災保険には加入しておいたほうがいいでしょう。火災や災害・事故で被った被害の修復費用を自己資金で賄うとすると、キャッシュフローが悪化する可能性が高いからです。
火災保険の保険料は、プランや適用範囲によって異なるほか、地域や建物の構造・規模によっても違ってきます。大まかに言って、地震以外の自然災害も広く補償するフルカバータイプの保険の場合、RC造の区分マンションだと年間1万円前後が目安と言えます。
地震保険は、火災保険の対象とならない「地震・噴火を原因とする火災や津波などによる損害」を補償します。単独での加入はできず、火災保険とセットで契約する必要があります。また、なお、地震保険は国と保険会社が共同して運営する仕組みのため、会社による保険料の違いはありません。
金融機関の融資手数料や保証料
ローンを組む際には、金融機関に対して事務手数料を支払います。事務手数料には、定額制定率制の2種類があります。定額制では3万円~6万円、定率性では借入金額の1%~3%というのが一般的です。
また、不動産投資のローンでは多くの場合、返済できなくなった際の備えとして借り手は保証会社と契約し、保証料を支払います。保証料の支払い方法は以下の2つです。
- 借入金利に上乗せし、毎月の返済額に組み入れる(上乗せ金利は0.2%~0.3%が一般的)
- ローンの借入時に一括で支払う(目安は借入金額の2%程度)
貯金に余裕がなくても不動産投資で成功するポイント
少ない手持ち資金で不動産投資に成功するためには、資金を適切に振り分け、効率的に活用することが重要です。ここでは、資金を効率的に活用する方法について説明しますので、参考にしてください。
レバレッジ効果を活用する
少ない自己資金で不動産投資に成功するためには、小さい資金で大きなリターンが期待できる「レバレッジ効果」を活用することが重要です。ローンを最大限に活用して、利回りの良い物件を購入すれば、少ない自己資金でも大きなリターンを獲得できる可能性が高まります。
また、利回りが同じであれば、物件の価格が高くなるほど得られるリターンは大きくなります。その意味でもローンをうまく活用することが大切です。
突発的な支出に対応できる資金を手元に残しておく
不動産投資では、空室や設備の故障、災害・事故による破損など、突発的に発生する支出に対する備えは不可欠です。どんなに好条件の物件でも、購入時点で手元資金がほとんど残っていない状態になってしまうのはリスクが大きすぎます。
自己資金が少ない場合は、仲介手数料や登録免許税、諸費用など、購入時に必要な支払いをしたあとで、手元にどれくらいの資金が残るかを把握しておくことが大切です。
不動産小口化商品を利用する
「不動産小口化商品」とは、1つの物件を複数の持ち分に分けて販売し、得られた利益を出資した割合に応じて分配する投資商品です。このため、少ない資金で投資を始められるのが最大のメリットです。
不動産小口化商品には「賃貸型」「任意組合型」「匿名組合型」という3つのタイプがあります。「賃貸型」「任意組合型」は購入者が所有者として登記され、分配される利益は「不動産所得」になります。これに対して「匿名組合型」は会社に対する出資という形になり、不動産の所有権は保有しません。分配される利益も「雑所得」となることに注意してください。
不動産投資信託を検討する
不動産小口化商品と同様、少ない資金で投資を始められる商品に「不動産投資信託」があります。不動産小口化商品が所有権や持分権を購入するのに対し、不動産投資信託は不動産投資事業を行う法人の証券を購入するのが大きな違いです。
不動産投資信託は証券化され、市場で自由に売買できるため流動性が高いのも特徴で、株式投資のように証券の売買で利益を出すことも可能です。
自己資金についてのお悩みはプロの不動産会社に相談!
現在の資金状況でどのような不動産投資をしたらいいのかを、自分自身で判断するのはなかなか大変です。また、貯金ゼロの場合も含めて、資金が少なければ不動産投資を始めるためのハードルが高くなることも確かです。
それは単純に資金調達に関することだけではありません。例えば、購入できる物件にも制約が出てきます。1人で悩むのではなく、さまざまなノウハウを持つプロの不動産会社に相談することをおすすめします。
まとめ
不動産投資は、ローンを活用することで少ない資金でも大きなリターンを得られる可能性があります。しかし、手持ち資金がまったくないとリスクが高くなるので、慎重な判断が求められます。
豊富な経験とノウハウを持つ不動産会社であれば、融資を受けられやすい物件探しはもちろんのこと、金融機関の紹介など物件購入に関するさまざまことをサポートしてくれます。まずは、パートナーとして安心いて任せられる不動産会社を見つけることから始めるのも1つの方法でしょう。